大人 vs. 子供
みんなのアート基礎講座は、今年も残すところあと2回となりました。
これもひとえにこれまで参加してくださった皆さんのおかげです。今年全体の振り返りと来年度の計画を立てるにはまだ早い時期ですが、3年目に向けて少しずつ動き始めています。
そんな中、最近とても素晴らしい美術教育の本に出会うことができました。どうしてもその話がしたくて今ブログに勢いで書いているところです。
まだ第1章を読み終えたばかりで途中ですが、そこには今年のアート基礎講座で特に子供たちから感じたことや考えたことが文章でそのまま記されており、まさに「目から鱗」の数々。この本は決して美術教育に関心がある人だけでなく、子供たちと接する機会の多い親御さんたちにも大変に参考になる本だと思います。
第1章は「大人」vs.「子供」をタイトルに、「子供の未分化性という性質」の5項目(以下)が大人との対比で語られています。
2 「視覚に偏っている」大人 vs. 「全感覚を起動する」子供
3 「概念に縛られている」大人 vs. 「『あるがまま』からスタートする」子供
4 「体験に閉じている」大人 vs. 「体験に開いている」子供
5 「目的、効率、計画に生きる」大人 vs. 「今、過程に生きる」子供
正直どの項目名も私の興味を引くものばかりなのですが、特に5番目が来年度のみんなのアート基礎講座の構成を組み立てていく上でとても重要になるお話が含まれていました。
それは造形活動を行う場面に於ける「様々な造形過程」を6つに分類(以下)し、特に大人たちは①と②の「目的」あっての「行為」や「材料」の順で進む傾向を指摘しています。つまり、私たち大人はあらかじめ目的を持って、効率よく、計画的に物事を進めていくことが大切だと思いがちです。
しかし、その逆に「目的」を持たず、③~⑥の造形過程のように、「材料」や「行為」から始まる意図しないことが起こりうることの中にも美術の面白さや美しさはたくさん存在します。例えば、与えられた紙(材料)を折ったり、ちぎったり(行為)していくうちに動物(目的)ができた!など。
つまり、子供たちは大人と違い、経験の蓄積が少ないため「過去」を持たず、と同時に「未来」を想像することも困難です。その為「今」という場所に一生懸命に向かい合うからこそ(一見、この行為は大人たちからすると無駄な行為に見えがちです)、「材料」や「行為」から始まる造形過程を通して「目的」が培われた大人になっていくのです。
① 目的 → 行為 → 材料
② 目的 → 材料 → 行為
③ 材料 → 目的 → 行為
④ 材料 → 行為 → 目的
⑤ 行為 → 目的 → 材料
⑥ 行為 → 材料 → 目的
このことは1~2年目の「みんなのアート基礎講座」の造形過程を批判的に捉えることができます。
つまり、大人の私が最終的に決めた「目的」スタートの構成にしていたからです。例えばテーマが「○○○」で「手ぬぐいづくり」や「コラージュ作品」など、「目的=結果または完成作品のイメージ」が頭の中にあらかじめあった上で進行するアート基礎講座。
もっと言えば、この「目的」からのスタートだけだと、まだまだ大人目線の枠組みから抜け出すことはできず、「みんなのアート基礎講座」の「みんな=子供からシニアの方まで誰でも参加=インクルーシブ教育」の本当の意味にはまだ近づいていないことを意味します。
結果、来年度は子供の特性をより生かしたこの「材料や行為からスタートする造形活動」がもう少しあっても良いと考えています。(ちなみに今年3月に行った「素材と表現の学習」はこれに相当します)
またこの事は、個人的に以前からやってみたかった内容(フィールドワークを生かしたアクティブな活動)とも重なります。
もちろん、参加者の皆さんに近々でアンケートのご協力を頂き、来年度の要望も合わせてから組み立てていきたいと考えています。詳細は年が明けてからの「2017年度の振り返り」までのお楽しみです。
それではまた!
これもひとえにこれまで参加してくださった皆さんのおかげです。今年全体の振り返りと来年度の計画を立てるにはまだ早い時期ですが、3年目に向けて少しずつ動き始めています。
そんな中、最近とても素晴らしい美術教育の本に出会うことができました。どうしてもその話がしたくて今ブログに勢いで書いているところです。
松岡宏明著 (株)三元社発行
まだ第1章を読み終えたばかりで途中ですが、そこには今年のアート基礎講座で特に子供たちから感じたことや考えたことが文章でそのまま記されており、まさに「目から鱗」の数々。この本は決して美術教育に関心がある人だけでなく、子供たちと接する機会の多い親御さんたちにも大変に参考になる本だと思います。
第1章は「大人」vs.「子供」をタイトルに、「子供の未分化性という性質」の5項目(以下)が大人との対比で語られています。
2 「視覚に偏っている」大人 vs. 「全感覚を起動する」子供
3 「概念に縛られている」大人 vs. 「『あるがまま』からスタートする」子供
4 「体験に閉じている」大人 vs. 「体験に開いている」子供
5 「目的、効率、計画に生きる」大人 vs. 「今、過程に生きる」子供
正直どの項目名も私の興味を引くものばかりなのですが、特に5番目が来年度のみんなのアート基礎講座の構成を組み立てていく上でとても重要になるお話が含まれていました。
それは造形活動を行う場面に於ける「様々な造形過程」を6つに分類(以下)し、特に大人たちは①と②の「目的」あっての「行為」や「材料」の順で進む傾向を指摘しています。つまり、私たち大人はあらかじめ目的を持って、効率よく、計画的に物事を進めていくことが大切だと思いがちです。
しかし、その逆に「目的」を持たず、③~⑥の造形過程のように、「材料」や「行為」から始まる意図しないことが起こりうることの中にも美術の面白さや美しさはたくさん存在します。例えば、与えられた紙(材料)を折ったり、ちぎったり(行為)していくうちに動物(目的)ができた!など。
つまり、子供たちは大人と違い、経験の蓄積が少ないため「過去」を持たず、と同時に「未来」を想像することも困難です。その為「今」という場所に一生懸命に向かい合うからこそ(一見、この行為は大人たちからすると無駄な行為に見えがちです)、「材料」や「行為」から始まる造形過程を通して「目的」が培われた大人になっていくのです。
① 目的 → 行為 → 材料
② 目的 → 材料 → 行為
③ 材料 → 目的 → 行為
④ 材料 → 行為 → 目的
⑤ 行為 → 目的 → 材料
⑥ 行為 → 材料 → 目的
つまり、大人の私が最終的に決めた「目的」スタートの構成にしていたからです。例えばテーマが「○○○」で「手ぬぐいづくり」や「コラージュ作品」など、「目的=結果または完成作品のイメージ」が頭の中にあらかじめあった上で進行するアート基礎講座。
もっと言えば、この「目的」からのスタートだけだと、まだまだ大人目線の枠組みから抜け出すことはできず、「みんなのアート基礎講座」の「みんな=子供からシニアの方まで誰でも参加=インクルーシブ教育」の本当の意味にはまだ近づいていないことを意味します。
結果、来年度は子供の特性をより生かしたこの「材料や行為からスタートする造形活動」がもう少しあっても良いと考えています。(ちなみに今年3月に行った「素材と表現の学習」はこれに相当します)
またこの事は、個人的に以前からやってみたかった内容(フィールドワークを生かしたアクティブな活動)とも重なります。
もちろん、参加者の皆さんに近々でアンケートのご協力を頂き、来年度の要望も合わせてから組み立てていきたいと考えています。詳細は年が明けてからの「2017年度の振り返り」までのお楽しみです。
それではまた!
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