第1回 みんなのアート基礎講座を終えて
■はじめに
あっという間に新年度が始まり、個人的なドタバタが落ち着いてからの約2週間は、今回のアート基礎講座の準備に追われていました。準備と言ってもテーマである「居場所」のリサーチとして関連書籍を何冊か読み、今の時代における居場所の全体像を大まかにつかんだ後、講座の組み立てを行っていきました。と同時にレゴブロックを参加者分、レンタルにするか、ブックオフで中古のものを購入するか?迷っていたりと。(結果、中古のものを購入)
「居場所」という言葉は、例えば「居場所がない」「居場所を奪われた」「居場所づくり」などよく耳にするとても身近な言葉でありながら、実はその意味や解釈も曖昧かつ多義的なため、どのようにこの講座の中で捉え伝えていけば良いのか?(結果、専門書の内容を指針にするのではなく、参加者の生の声を即興的に組み立てていく捉え方に決めました)また今回の参加者層が比較的低学年の児童が多かったため、リサーチ内容に寄ったあまり難しいものにはせず、参加者の経験から自然に派生する、けれど低学年の子ども達にもコミュニケーションや会話をアート制作の重要な要素として体験してもらいたいと構成してみました。
私個人にとっても前々から「居場所」はアートコンパスでは外せないキーワードであり、特に「コミュニティ」や「アイデンティティ」という言葉と親和性や関連がとてもあるのではないかと感じていました。いつか本腰を入れて調べなくてはと。。。
そして実際にリサーチを始めてみると「やって良かった」の一言。初めてのテーマを講座として作り上げることは自身の勉強や視野の広がりにつながると同時に、当日どのような進行になるのか?全くもって未知の領域なため、開催日の数日前からは頭の中で何度も当日のシミュレーションをしてみたり、自分が小学1年生の男の子になったつもりでこの講座を受けている状況を考えてみたりと・・・つまり初めてのアート講座はどんなものでも正直不安がつきものなわけです。
長々とおしゃべりをしてしまいましたが、「居場所」に対する様々な考えを通して、少しでも参加者の皆さんが楽しく感じていただき、ここでの経験が今すぐでなくても、いつか居場所について深く考えなければならない場面に出くわしたとき、この時の講座を思い出してその状況を乗り越えてくれれば幸いです。
それでは今日の内容を、ちょいちょいリサーチ結果も挟みながら、工程順にみていきたいと思います。
概要:
第1回みんなのアート基礎講座
テーマ:私の居場所
内容:マインドマップとレゴブロックで「私の居場所」を表現
日時:2023年4月23日(日)13:30~16:00
場所:本郷ふれあいセンター・アトリエ
参加者:6組(計17名:子ども9名+大人7名+中村)
タイムスケジュール:
13:30~13:35 ⓪ 自己紹介(お名前・出身地・茨城県以外で住んでみたい都道府県)
13:35~13:45 ① 共同ワーク・その1「居場所の意味・定義」
13:45~14:00 ② 共同ワーク・その2「居場所の種類・分類」
14:00~14:25 ③ 個人ワーク・その1「マインドマップ」
14:25~14:30 休憩
14:30~15:45 ④ 個人ワーク・その2「レゴブロック」
15:45~16:00 ⑤ 共同ワーク・その3「作品の発表」
■① 共同ワーク・その1「居場所の意味・定義」
今回の講座では、参加者全員で一緒に行う「共同ワーク」と一人で行う「個人ワーク」の2つを行き来しながら居場所について深堀していきました。そして休憩を挟んだ前半が「マインドマップ」、後半が「レゴブロック」で立体作品の制作。
はじめにみんなで居場所の意味を考えていきました。
居場所の意味を辞書で調べると、次のような意味が出てきます。
1.ひとのいるところ、いどころ
2.安心していられる、自分らしくいられる
つまり、居場所の意味を考察すると、人の所在を表す「物理的な意味」と、人の心の状態を表す「心理的な意味」の大きく二つに分かれます。実は歴史的に見ていくと、もともとは物理的な意味として使われていたのですが、1950~1960年代の不登校問題をきっかけに心理的な意味でも日常的に使われるようになってきたと言います。ここの部分をもっと深堀していくととても興味深いことがたくさん出てくるのですが、ここでは省かせていただきます。
話を戻します。
実際、参加者の皆さんにその意味を考えていただき発表していただくと、いろいろな意味が出てきました。例えば、
・どれだけ騒いでも、うるさくしても、迷惑がかからない場所
・家族と笑い合える、生きていて良かったと思える場所
・楽しいところ、仕事や勉強が出来るところ
・安全で静かな場所
・落ち着く、ほっとする場所など
更にリサーチで出てきた意味も加えてみると、
・自分が自分でいるための環境
・自分が確認できる場所
・自分らしくありのままでいられる場所・・・
つまり、安全で楽しくほっとする場所だけでなく、自分の「アイデンティティ」が形成されたり、感じられたりする場所なのかもしれません。
■② 共同ワーク・その2「居場所の種類・分類」
次に具体的な居場所を大きく4つ「一人・家族・学校や職場・その他」に分類してあげていくと、これもまた様々な場所が出てきました。例えば、・一人の居場所としては、自分の部屋、おもちゃ部屋、布団の中。。。
・家族との居場所では、家、お風呂、リビングルーム、テレビのある部屋。。。
・学校や職場では、図書室、デッキ、保健室、教室の真ん中の一番前の席。。。
・その他では、防音部屋、自分しか出入りできない場所、危なくなったら逃げ込める場所、公園の芝生、雑貨屋さん、ホームセンター、遊園地、友達の家。。。
こうやって見ていくと、たった6組の参加者だけでもこれだけたくさんの、かつ色々な居場所が出てきましたね。
■③ 個人ワーク・その1「マインドマップ」
ここまででみんなと一緒に「居場所」の意味と種類・分類を行い、「居場所」に関するイメージを全員で共有した後、早速一人ひとりでマインドマップの制作を始めていきました。小さいお子さんにはここまでの過程が難しく感じたかもしれませんが、お父さんやお母さんのフォローもあって進めることが出来たと思います。マインドマップも居場所に関するキーワードをどんどん放射状につなげていきながら、またおしゃべりしながら進めていきました。
発表の最後に参加者の皆さんへ私から宿題を出させていただきました。
ここでいったん休憩に入りました。
■④ 個人ワーク・その2「レゴブロック」
レゴブロックという遊具は面白いもので、遊び始めると「あーでもない・こーでもない」といろいろなアイデアが手を動かしていくうちにたくさん生まれてきます。すると前半で制作したマインドマップの居場所とは全く異なるものが生まれてくる可能性が予想されます。実際私も試作品を作ってみてそのような状態でした・笑
個人的にはそれも良しとしていて、自由に展開していただき、最終的に全く想像もしていなかった居場所が生まれても大丈夫ですと参加者へ伝えました。
また各テーブルのレゴブロックで足りないパーツは、他のテーブルの参加者と交渉してもらってくださいとも。すると、子ども達は他のテーブルに回っては「これいい?」と会話と交流が生まれていきました。
ちなみに参加した子どもたちのほとんどがお家にレゴブロックを持っていたり、遊んだことがある経験者たちでした。
妹さんは広い芝生の上で動物たちとくつろいでいます。
お兄ちゃんはお友達と焚火を囲んでおしゃべりが弾んでいるようです。
住んでみたい平屋のお家。
うまく外と内とその中間の空間が織り交ざった居場所となっていますね。
おもちゃの部屋。いろいろな遊具があって、
一日中いても遊び足りない居場所になっています!
レゴの常識を覆した作品です。
青いブロックは水がたくさんあふれている様子を表現。
監視カメラやレーザービーム?が出る厳しめの居場所です。
でも内側は洗面器やテーブルなど生活感があってほっとしますね。
外には雲梯。中にはお布団などリラックスしてくつろげる居場所になっています。
コチラは私の作品。将来のアートコンパスの拠点を表現してみました。
中は20~30人の参加者が入れる図工室のような空間。
外にはウッドデッキや家庭菜園の畑など。
それは「あなたにとって居場所は必要ですか?」という問いです。そして「もし必要だと思ったのなら、どうして必要だと感じたのか?その理由も一緒に考えてみてください」と。
私のこれまでの40年以上の人生経験で「居場所がない」と感じたことは何度かありました。おそらく皆さんも一つや二つあった経験がお持ちだと思います。私はその時のことを今でも鮮明に覚えていて、今までの居場所は全て誰かにつくられていたところに自分が加わっていた事に気づき、「今までどうして自分の手で自分の居場所を作ってみようと思わなかったのか?」その時そう感じました。
そこで自分が自分らしくいられる場所には必ずアートがあって、その居場所をつくろうと思い立ち、出来上がったのがこのアートコンパスだったわけです。そして居場所づくりを続けていくうちに、居場所とは自分の成長と共に変化し続けるものなんだと感じています。より善く幸せに生きたいと願い、地域の人たちへより善く還元していける居場所へとつながっていければと。そこに一人ひとりのアイデンティティが感じられる場所に!
おしまい
【参照】
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