第2回 みんなのアート基礎講座を終えて

5月26日(日)午後、第2回 みんなのアート基礎講座が行われました。

年間で全3回のデザイン講座のうち、今年度最初となる本日は、
『手に持つ道具づくり』をテーマに「プロトタイプ」について学びました。
参加者の皆さんと記念撮影♫

デザイン講座では、こちら↓の仕組みをもとに講座を組んでおり、


今回も、以下のような4部構成で行いました。


『Show&Tell』
・各自持参した「手に持つ道具」の紹介

『疑似体験(シミュレーション)』
・画像を見ながら、持参した「手に持つ道具」を使ってみる

『手に持つ道具のプロトタイプ制作』
・教室にある材料を自由に使って「プロトタイプ(=試作品)」を制作

『発表・ふりかえり』




『Show&Tell』
まずは、各自持参して頂いた「手に持つ道具」を紹介して頂きました。
今回、参加者の皆さんが持ってきたものは・・・

・コントローラー
・弓
・コンパクトセロハンテープ
・おままごと用の道具
・コロコロ
・ドライバー
・ライター

でした。
道具の名前、どのように使う道具か?、選んだ理由、をシェアして頂きました。


『疑似体験(シミュレーション)』

次に、スライドに映った画像を見てもらい、持参して頂いた道具を“なんとかして使ってみる”というお題で、シミュレーションしてもらう、ということをしました。
本来の使い方で使ってもいいし、この時間だけは、本来の使い方とは違う、変な使い方をしてもいいですよ。
ということにして、持っているその道具で何が出来るか?を考えてもらいました。
角度を変えて、その道具を観察したり、触ってみたりと、道具のカタチや機能を活かして何が出来るか?を考えてくださいました。

たくさんの画像を見て、いろんな使い方をしてもらう中で、
最後に参加者の皆さんに「気づいたこと」を聞きました↓

・「(待ってる時間に)ゲームに使えた」(コントローラー)
・「守ったり攻撃するのに使えた」(弓)
・「セロハンテープのくっつく機能と切る部分でいろいろ使い方があるんだなと思った」(コンパクトセロハンテープ)
・「フライパンは、料理もできるし武器にもなった」(おままごと用の道具)
・「もとの機能はゴミを取ることだけど、それよりも回転することに可能性を感じた」(コロコロ)
・「マイナスドライバーの形が、こすり落としたり、切ったり、皮を剥いたりと、この形使えるんだなと思った」(ドライバー)
・「ライターは火をつけるのが目的なので、形にあまり特徴が無いと思った」(ライター)

ちなみに、
いろいろな画像を見ながら発言してくれたことの一部は・・・↓

・「(月面の画像を実ながら)月に行くには時間がかかるので、ゲームをする」(コントローラー)
・「(動物の画像を見ながら)矢に肉や草をつけて飛ばして餌をやる」(弓)
・「(お風呂の画像を見ながら)壁にテープをくっつけて掃除する」(コンパクトセロハンテープ)
・「(ヴェルサイユ宮殿の画像を見ながら)不審者をフライパンでやっつける」(おままごと用の道具)
・「(キャンプの画像を見ながら)回転する部分を使って火をおこす」(コロコロ)
・「(ケーキの画像を見ながら)フルーツカービングに使う」(ドライバー)
・「(書道作品の画像を見ながら)火を燃やして描いていく」(ライター)

他にも、自分の持っている道具だけでなく、他の人が持ってきた道具を使ったときのアイデアも飛び交いました↓

(ケーキの画像を見ながら)弓の糸の部分でケーキを切り分ける」
(月面の画像を見ながら)弓を飛ばして、他の星と重力がどう違うか比べる」
(車の画像を見ながら)コントローラーをハンドル代わりにして運転する」
(カレーライスの画像を見ながら)セロハンテープをたくさん貼り合わせてサランラップ代わりにする」

などなど。

画像から読み取れる情報をもとにして、さらに“もし◯◯だったら・・・”という状況をも想定して、道具の機能やカタチを活かす斬新な発想がたくさんあがってきました。


『手に持つ道具のプロトタイプ制作』
ここからは個人ワークに入っていきます。
持参して頂いた「手に持つ道具」をもとに、教室にあらかじめ用意してある材料の中から自由に選んで、それらを使ってプロトタイプを制作してもらいます。
まずは私から、「プロトタイプ」について簡単に説明させて頂きました。
デザインの過程では、はじめから完成品が出来上がることはほぼありません。
いくつかの「プロトタイプ(試作品)」を作って検証を重ねて出来上がります。また、デザイン思考においても、「プロトタイプ」という考え方そのものも重要視されています。

「今日は、“ためしに作ってみた!”という気持ちで作ってみてください」とお話しさせていただきました。

そして今回は、
「1つを作り込むのではなく、2つ以上のアイデアをカタチにしてください」と条件を出させて頂きました。



『発表・ふりかえり』
作品発表をする際には、2つ以上作って頂いたプロトタイプを比べてどう思ったか?ということも聞いていきました。

それでは紹介します。

左の男の子:弓、右の男の子:コントローラー
左の男の子は、3種類の弓を作りました。
シンプルな弓と、装飾が入ったり弾を収納できる弓、そして剣になる弓だそうです。
3つのプロトタイプを比べて思ったことは、「あまりカッコ良くしないほうがいいと思った。付け足していくと大変になるから。」とのこと。
シンプルについては、デザインの永遠のテーマなので、ぜひその葛藤は大事にして欲しいです。

右の男の子は、2種類のコントローラーを作りました。
画面付きの大きなコントローラーと、細長くて曲がっているコントローラでした。電池パックがコードで繋がれていました。
2つのプロトタイプを比べて思ったことは、「違いは、サイズが違う。」とのこと。
また、参加者から「どっちか一つを選ぶとしたら、どっちが欲しい?」という質問には「大きいほうのコントローラー」と答えていました。
大きいほうのコントローラーの裏面には、指にフィットする穴があり、持ちやすさを追求した工夫がされてありました。


こちらは、お母さんと娘さんとの共同制作でした。
3種類のセロハンテープを作りました。
ハートの付箋型のセロハンテープと、幅の違うテープを複数設置して使える「はらぺこあおむし」のセロテープ、娘さんが「かたつむり」と言っていた置き型のセロテープ、でした。
娘さんが使うにはまだ置き型の方が良いと思って。と置き型タイプを作ったとのこと。

3つのプロトタイプを比べて思ったことは、「使いやすさでいろんな種類が作れるなぁと思いました」とおっしゃっていました。
可愛らしいデザインに、参加者の方から「刺さりました!」との声も。


こちらの女性は、3種類のドライバーを作りました。 
女性のお部屋にあっても可愛いハート型のドライバーと、女性や高齢者でも握りやすく力が入れやすいグリップを追求したドライバー、いろんな種類のドライバーを収納できて付け替えができるドライバー、の3つでした。

ハート型のドライバーは、一見ドライバーに見えないものとして、オブジェとしてを考えて作られたそうです。
女性や高齢者でも握りやすく力が入れやすいグリップを追求したドライバーは、くぼみをつけて工夫してありました。
いろんな種類を収納できるドライバーは、ロケット鉛筆から着想を得たそう。付け替えたい時には、持ち手部分がくるっと縦横に分かれ、取り出せるようになっています。

3つのプロトタイプを比べて思ったことは、「ドライバーなので、握りやすさをいろいろ考えると、ぎゅっと握れるのが良いのか指を引っ掛けて握るのかなど、向きによっても握り方によっても変わるので、その違いが面白かった」とのことでした。

コントローラーで持ちやすさを工夫していた男の子から「持ちやすさと言っていたけど、握るところは硬いのか柔らかいのかどっちですか?」と質問があり、「理想は、芯が硬くて表面は柔らかくなっているのが良いと思う」と答えていらっしゃいました。
「手に持つ道具」ということで、手が触れる部分の「持ちやすさ」「握りやすさ」に着目し、道具の素材にも興味を広げていた質問のやりとりでした。


 こちらの親子は、おままごとの道具を元に、フライパンやお皿などの道具をたくさん作ってくれました。
シミュレーションの時に、フライパンが「武器にもなる」という気づきから着想して、トゲトゲの形のフライパンや、先が尖ったフライパン、四角い角があるフライパンを作っていました。
“じつはあった”機能を意識することで、また新しいデザインが生まれるなぁと思いました。

「色に何か意味はありますか?」との参加者の質問に、
「武器なので、武器に見えないような可愛い色にしたかった」とおっしゃっていました。

可愛いけど武器っていうギャップがまたイイですよね。

プロトタイプを比べて思ったことは、「でもやっぱり使い道を考えると、普通のフライパンの方が良いんじゃないかなと思った」とのことでした。

可愛いおままごと道具がまた増えましたね。
自分が作った道具でおままごとをするのも楽しそうです⭐︎


こちらの男性は、ライターのプロトタイプを10個作りました。
シミュレーションの時に、「ライターは火をつけるのが目的なので、形にあまり特徴が無いと思った」という気づきから始まり、「自分にとって握りやすいカタチをいろいろ作った」とのこと。

作ったプロトタイプを実際に握って、確認しながら作っていて、同じようなカタチでもサイズ違いのものも作って検討していました。
実際に試しながら改良していくプロセスがあり、「これは失敗作です」というプロトタイプもあり、また拡散的なアイデアをカタチにしたものもあり、デザイン思考のプロトタイプの考え方をよく実践されてる印象でした。よくご存知で。

これらのプロトタイプを比べて思ったことは、「やっぱり大きいと邪魔になるので小さいほうが良いと思った」とのこと。




こちらは玄也先生の作品です。
「コロコロを転がして、床やベット、服の細かいゴミを取り除く」というコロコロの用途に着目し、「転がし方」「取り除き方」「使う場所によって」というポイントで考えられたプロトタイプができていました。(詳しい説明はぜひ上の画像を見てみてください)

こちらの、指に取り付けるタイプの長さが、隙間のお掃除に絶妙!な長さですよね↓
サイズ感を確認できるところも、プロトタイプ作りの良いところですね。
これらのプロトタイプを比べて思ったことは、「自分の部屋の掃除、実体験に基づいているので、これらのものを他の人が使ったら、またカタチも違ってくるだろうし、そういったところの意見を取り入れて、もし製品化できてアートコンパスの収益になるんだったら、やってみたいかなと思います。笑」とのこと。
皆さまご意見お待ちしております(笑)

ちなみに、参加者の方から、「紙ではなく、くっつくけど何度も洗って使える素材を採用したらどうか?」という話もありました。
男の子からは「いくらですか?」という質問も。笑

制作後、子どもならでは大人ならではな視点からフィードバックがあるのも、この講座の良さではないでしょうか。

以上、参加者の皆さんの作品紹介でした。


最後に、一つだけ、私から弁明といいますか、
この講座では、プロダクトデザインを扱ってはおりますが、
ターゲット設定などの企画プロセスを踏んだ講座にはなっておりません。

じゃあ何?というところは、こちらの詳細を見ていただければと思います⇩
ちなみにこの背景としては、
“子どもも大人も一緒にデザインを楽しむには?”という、アートコンパスの講座ならではの事情もあります。

デザインや商品企画を専門としてる方にとっては、「おや?企画プロセスは?」と思うかもしれませんが、以上のような理由があるということをここに書いておきたいと思います。

長くなりましたが、最後までお付き合いありがとうございました。

参加者の皆さま、ご参加ありがとうございました!



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