ランタンアート2018を終えて(後編)

二日目の点灯式
子供達が時間に間に合わず、
お父さんと私の男二人で行いました。
 
参加者の皆さんと一緒に記念写真 


3.パブリックアートの難しさ


ここで少し話が脱線しますが、皆さんは「パブリックアート(Public Art)」という言葉をご存知でしょうか?

直訳すると、「公共のアート」ということになります。

もともとこの言葉自体は第二次大戦後にアメリカで生まれた概念ですが、私たち日本でも今では街のいたるところに人の彫刻像や抽象的な形をした大きなモニュメントなど目にする機会があると思います。

TX万博記念公園駅前のモニュメント
岡本太郎作「未来を視る」
 

その目的は、

  1. 芸術作品を街や公園に置いて市民に身近なものにするということ
  2. 芸術作品の設置によってその都市・場所・住民の歴史、気概、願いを形にして、公共の福祉の向上に寄与し、街づくりに結びつけたり地域共同体の活性化に結び付けたりその都市に文化価値を付け加えたりすること
(wikkipediaより抜粋)

とあります。つまり、公共(Public)の反対である個人的(Private)な一部の人たちのためのものではなく、より多くの市民のための開かれたアートであるということです。

それではその作品に対して、我々市民は自由に触れても、勝手に手を加えてもいいのでしょうか?それとも全く近寄らずに遠くから眺めて楽しまなければならないものなのでしょうか?この市民と作品との距離感(鑑賞者とアート作品の関係性)がとてもグレーゾーンであり、ミステリーなわけです。

例えば今回の場合、私がランタンツリーに興味を引かれ近づいてくる鑑賞者達に逐一「遠くに離れて見てください、作品には近寄らないで下さい」と言うべきだったのか?または作品を守る為、囲むようにテープで立ち入り禁止の境界線を地面に貼るべきだったのか?

個人的にはこのような行為は「無粋」に感じてしまいます。(勿論作品の間に入った際は中には入らないよう注意を促しました。)けれど作品に危害が及ぶ事は許されませんし、そもそも火の元である以上、鑑賞者たちの安全面にも注意が必要です。

さらに余談ですが、アートの世界に「インスタレーション」という作品形態の言葉があります。最近ではよくテレビやラジオなどでもよく耳にしますが、それは室内外問わず、作品、鑑賞者、空間の三者が一体となって一つのアート作品であるという考え方です。この考えはイタリアの「アルテポベラ」、アメリカの「ミニマルアート」の大西洋を挟んでほぼ同じ時代(1960年代)に生まれた概念です。(ちなみに私は大学の卒論で「Cultural Identity」というタイトルで、この二つの芸術運動を引用しました。)

イギリスの作家、レイチェル・ホワイトリードのインスタレーション作品
 

このランタンアートは市民参加型のアートイベントであり、パブリックアートでもあり、インスタレーションでもあると個人的には思います。

但し、どこまでこの三者(ランタン・鑑賞者・センター地区)の境界線を明確にするのか?ぼやかすのか?はたまたそもそも境界線など存在しないのか?

ただ一言いえる事は、作品だけその場にあっても、人だけであってもその空間では「アートが成り立たない」ということです。それぞれが相互に関係し合い、それぞれの様々な意味が創生される延長上にアートが成立するといったほうが正しいように思います。

 私が東京に居た時、
某公園にて市民参加型のアートイベントを企画しました。
それは園内の動植物を土とステンシルで遊歩道に描いていくというもの。


4.参加者からのご意見・アドバイス


話を戻します。

今回、鑑賞者と作品の接触で作品が燃えてしまうアクシデントが起こりました。直後の私は少々神経質になり、注意を促すことでいっぱいだったと思います。

それから終了時間30分ほど前に、後片付けの為に参加者の親子が戻ってきてくださったことを機に、この件について相談してみました。

 

全ての事情を話した後で、その方から次のようなアドバイスをいただきました。

「鑑賞者の皆さんが作品と一緒に記念撮影できるように、作品の配置を変えてみてはどうでしょうか?」

例えば隣の一般展示作品は円陣を組み、うまく鑑賞者が中に入れないような工夫が見られます。結果、作品も鑑賞者のどちらも「win-win」の関係で楽しい夜を過ごすことが出来るではありませんか。

隣で展示していた一般参加作品 
 
 
この貴重なアドバイスには、全ての鑑賞者に対し排除しない視点と配慮の考えが込められていました。

そうだよなぁ~と思い直し、その時は「今夜改めて配置の組み合わせを考え、明日試してみます。」と返答させていただきましたが、参加者全員の意見や了承もいただきたかったので、二日目は初日と同じ配置にし、適宜、鑑賞者と積極的にコミュニケーションを取りながら、作品を守っていこうと考え直しました。





 

5.最後に、作品の受け取りと家での楽しみ方


二日目は参加者のお父さんにも点灯式後もしばらく手伝っていただき、終了時間が来るまで無事に作品が燃えることなく終えることが出来ました。

昨日のことがあったので、もしかしたら「口うるさいやつがいるなぁ~」と来場者の方々から思われたかもしれませんが(笑)、とにかくこの二日間を終えることが出来ました。

個人的には参加者の皆さんと一緒に作品を制作することも楽しかったですが、その作品を設置してからの、鑑賞者の皆さんの反応を生で見て聞くことがこれまた何とも言えない幸せなひと時でした。

と同時に来年度もランタンアートに是非参加したいと思いますし、今年の反省点を次に生かし、今の現状に満足することなく、よりよいアートなかたちにしていきたいと思っています。

尚、参加者の皆さんの作品は後日指定の日に受け渡しの予定です。家の中でろうそくを使ってみるのも良いのですが、もし火の元が気になる方は、百円ショップで販売されているLEDライトでも代用できます。

そしてクリスマスの日に自分が制作したランタンツリーを再び点灯して、この冬の思い出を家族と一緒に振り返っていただければと思います。

最後になりましたが、参加者の皆さん、本当にありがとうございました。

また来年度も引き続き、アートコンパスをよろしくお願い致します!

※1~3月はお休み期間で、2019年4月からまた始まります!


おしまい!



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