続・点描画法って何?

今回は前回に続き、絵画技法について詳しくお話したいと思います。

先ずは「点描画法」のご説明の前に、次の2つの絵画AとBを見比べて鑑賞してみてください。
皆さんはどのように感じますか?



絵画A

絵画B


どちらも素敵な風景画ですよね!

けれど同じ風景画でもその特徴は大きく違って見えます。そこで、その特徴を大きく3つの項目で見比べてみました。(以下)


どちらの絵画もフランスの画家の手によって描かれたものです。Aは、クロード・ロラン(1600~1682)「商人たちのいる風景(1629)」、Bは、クロード・モネ(1840~1926)の作品「サンジェルマンの森の下草(1882)」です。

そして絵画Bの特徴が、印象派を象徴する絵画技法「色彩分割法(又は筆触分割法)」の特徴と一致します。

それは一体どういうことなのか?

私たちの世界には固有色が存在します。例えば、りんごの固有色は仮に「赤」とします。その色はどのような環境下(太陽の下、暗い室内)でもその「赤」という色は変わることがありません。

しかし、私たちの目から見たりんごの色は、ときにとても熟れた「鮮明な赤」に見えたり、雨の日や曇り空の下では、「くすんだ赤」に見えたりと自然の光のもとでは刻々と変化していきます。

つまり、印象派の画家たちは「概念の世界(固有色)」ではなく、自分の視覚から見た印象を忠実に絵筆を伝って表現しようと試みました。

但し、ここで問題があります。

それは「絵具を使用したとき、混ぜれば混ぜるほど、暗い色になってしまうこと」です。

絵具を使ったことがある人であれば、ご経験があるはずです。いろいろな絵具をたくさん混ぜれば混ぜるほどにグレー調の暗い色になってしまうことを。
なので小学校の時、先生から「色を混ぜるのであれば2~3色程度がいいよ」と言われたことはありませんか?(ちなみに、これは専門用語で「減法混色」と言います。)


印象派の画家たちは、自分の感じたその色彩豊かな瞬時の美しい印象を表現する上で、絵具を使いたい!けれど、この鈍くなってしまう現象はなんとしても避けたい!と思った訳です。

そこで生み出されたのが、「色彩分割法」です。


では色彩分割法とは具体的にどのような画法なのか?

次の図をご覧ください。任意の色(2色)が丸枠の中に点在しています。一つは赤色、もう一つは黄色です。





そして遠く離れてこの丸枠内を見たとき、目を細めて見たとき、何色に見えますか?(感じますか?)

そうですよね、橙色(オレンジ色)に見えますよね。

つまり、色彩分割法とは絵具の素材を生かしつつ、キャンバスに描かれた2色が、人間の視覚の中で混合した色に見える現象(視覚混合 or 網膜混合)を利用した絵画技法なのです。

別な言い方をすれば、それぞれの色が、自分の色味を生かしつつ、他色と協力して、別の美しい色を表現しているわけです!


「種をまく人」(1888)
フィンセント・ファン・ゴッホ(1853~1890)
地面を良く見ると、大きく2色(青色と橙色)が混合されています。
そして遠近感を表現するために、奥に行くほど筆のタッチを小さく密度が増し
また各色に白色を混ぜ、彩度を落とす工夫が見られます。



そして、点描画法はこの色彩分割法を更に(大胆な筆跡から緻密な点跡へと)展開した絵画技法と言えます。


ジョルジュ・スーラーの「サーカスの客寄せ」(1889)


上画の右側(赤枠内)に描かれている男性の拡大図


余談ですが、この点描の仕組みが、現代では更に展開したかたちで私たちの身近に存在しています。

そうです、皆さんもよくご存知のスマホやデジタルカメラで撮影される画像(ビットマップ画像)はピクセル(色情報を持つ最小単位)と呼ばれる小さな色面の集まりで構成されています。時代というものは繋がっているんですね!






今回は長々と絵画技法についてお話しましたが、講座当日はあまり深く考えず、私たちの感性に任せて、絵の具を使って新しい色づくりを体験してみたり、色彩の混色やその見え方・見せ方を楽しんでみたりしながら「自分の好きな風景」を自由に描いていこうと思っています。私もこれから試作品を作ってみますね。

それではまた。

PS: まだまだ参加者を募集しています!



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