瀬戸内国際芸術祭(2日目:直島)

ホテルから港へ向かう途中に大きな垂れ幕

現在、西日本に大型の台風10号が接近しているため、本日の午後から明日にかけて各島の展示会場の臨時休館が発表されました。そこで昨夜、改めて当初の計画を見直し、各島を巡るシミュレーションをしたところ、やはり今日は予定通り直島(なおしま)に行くことにしました。

早朝の高松港
 
芸術祭のボランティア:こえび隊の朝礼時に出くわす。
中国や台湾等のアジアの国々のボランティアさんも見受けられました。
 
 
但し、高松港から直島へのフェリーの運航状況が昨夜の段階では分からなかったので、今朝、812分発のフェリーに間に合うように高松港切符売場へ40分前に到着。そして受付の方に尋ねてみると、おそらく帰りの最終便が1420に早まりそうだとのこと(但し台風の状況によっては分からない)。つまり、直島での滞在時間はおよそ6時間。

 

直島は主に「宮ノ浦(みやのうら)」「本村(ほんむら)」「ベネッセハウス周辺」の3つのエリアに分かれており、ゆっくりと自分のペース(交通機関をあまり利用せず、ひたすら徒歩で巡る)で見て回るとなると、2つまでが限度だと見積もりました。(今回は地中美術館などがあるベネッセハウス周辺を断念)結果、以下のルートで決断。


NPO法人直島町観光協会発行
直島 瀬戸芸特別ver. vol1.2 より
 

 

 高松(812発)―<フェリー>→宮ノ浦(902着&巡回)―<徒歩で本村へ移動30分>→本村(巡回+昼食)→<バスで宮ノ浦へ移動6分>→宮ノ浦(1420発)―<フェリー>→高松(1520着)→その足で香川県立ミュージアムへ


フェリーでの移動は片道1時間でしたが、ず~っと海ばかり眺めていました。
 
 
直島に到着したばかりのフェリー
草間彌生さんの赤のドットが模様として施されていますね。
 
直島に到着後、台風状況と高松行きの最終フェリーの時刻を確認。
 
瀬戸内に生まれて初めて来て感じたこと、それはとにかく空が広い!
そう感じるのは天地の地に穏やかな海が広がるから余計にそう感じるのかな?
そして見渡す限りの美しい青!
 
建築家、藤本壮介氏の作品「直島パヴィリオン」
 
 
この貴重な6時間の滞在の率直な感想を述べると、私が今まで見てきたサイトスペシフィックな作品や地域を振り返ってみても、おそらく一番、いや世界でも指折りのアートスポットではないかと感じました。どうしてこの島が「アートの聖地」と呼ばれていたのが分かった気がします(特に「本村」です)。
 
 
建築家、三分一博志氏の The Naoshima Plan 2019「水」
一年ほど前まで住んでいた旧家を
「リサーチを兼ねた体感型パヴィリオンからなる建築展」へ
 
とっても美しかった、気持ちがよかった、本当に日本人として生まれてきて良かった!
心からそう思う展示でした。
 
常駐ガイドさんに勧められるままに素足を水の中に。
足湯ならぬ足井戸水?
 
感動のあまり、しばらくこの場所から離れることが出来ませんでした。
井戸から湧き上がる水の冷たさ
そして敷地内を南北に吹き抜ける気持ちの良い風を感じながら。
 
実はこの集落一帯がもともと海の底で、干拓地であったこと、
近くの山の斜面には棚田が敷かれ、
それを伝った山からの冷たい風が集落を通る仕組みになっていたこと。
また点在する井戸が豊なコミュニティを育んでいたこと。
 
集落の地図
 
鑑賞者にはA3サイズのラミネートが施された解説図を手渡されました。
 
 

改めて日本家屋って本当に素晴らしいと思いました。
建物の縦(天地)の方向、横(内外)の方向がとても滑らかで、
人の身体にやさしく、そして負荷がない構造になっている。
 
奥に見えるのが中庭
 
こんな家に住みたい!
まさに陰翳礼讃の空間でした。
 
 
 
中庭には盆栽も。
 
南口付近に燕の巣がありました。
 
南口、ここから風が北口に向かって風が流れていました。
 
集落の街並み
 

同じく三分一氏が設計したホール
綿密なリサーチのもと、自然の風力で空気の循環を促す設計になっているそうです。
日本最大級の総檜葺き。内部の見事な漆喰塗り。
こりゃ~建築家を志す学生達にはたまらない島だなぁ~
 
 
ジェームズ・タレル氏の作品「バックサイド・オブ・ザ・ムーン」(室内は撮影他、光るものは禁止)
指定された時間で最大16名ずつ入館で来ます。
ガイドさんに暗闇の仲に案内され、中のベンチに座ること5~10分ほどで
徐々にその日仮の作品が現れてくる。
 
お昼はタコ飯とビンビール!
  

  
 
直島バーガー!(ハマチのフライと特性タルタルソース)
パン自体も美味しかったです。
 
 
食後はその足で宮島達男氏の作品「Sea of Time '98」を鑑賞。(撮影禁止)
家屋内には水が張り巡らされ、その中に時を刻む作品が点在。  

この時点であと一作品を鑑賞し、帰りはバスで宮ノ浦へ戻ると決める。
 
 
美しい朝顔と護王(ごおう)神社の鳥居が出迎えてくれました。
ボランティアガイドさん曰く、本殿までの階段数は47段あるそうです。
 







杉本博氏の作品「Appropriate Proportion 2002」
 

実はこの本殿の下に地下の石室(3畳ほどの空間)があります(撮影禁止)
まるで古墳のお墓内を連想する空間でした。
その床にも水が張り巡らされ、石室と本殿がガラスの階段で結ばれています。
このガラスの階段を通して石室内に光を取り込み、水面に光が反射していました。


ちょうどこの下に石室への縦に細長い入口通路があります。
写真のちょっと出っ張った四角い石が入口の天井部分
 
 

おそらくそう断言できる理由は、ホワイトキューブ(白色で統一された室内)や美術館の中に作品が展示されているかたちよりも、その場所の特性:自然や人や歴史、風土を読み取り、アーティストがただ自分の作品(スタイル)や独自の考えを身勝手に持ち込むのではなく、それらの要素と作家の考えを巧みに融合ないし調和する表現が素晴らしく、また様々な作家が集合的かつ多様な独自の読み取りを通して彩ることで、「本村」という地域の特性をより引き立てていたからだと思います。また何よりも今の時代をストレートに反映している。このエリアで古くから脈々と紡ぎ語られてきた歴史に、大地から高度経済成長という大きな波によって離れてしまった日本人とを、この芸術祭を通して再び繋ぎ合わされている事実にとても深い感動を覚えました。そしてそのキーワードは何と言っても「水」です。この地域で井戸水を中心としたコミュニティが存在し、その「水」を各作家達は丁寧に紐解き、この時代の新たなコミュニティを再構築していました。

 

もし今回、台風の影響がなく、この後、ベネッセ周辺も巡ることができたなら、この島の全体をどう感じることが出来たのか?残念ではありますが、十分過ぎるくらいに楽しめたので、これはこれで良かったと思っています。機会があればまたこの地に戻って来たいと思います。

  

お昼を過ぎた頃から小雨がぱらつき、雲行きが怪しくなってきました。
草間彌生さんの作品「赤かぼちゃ」
 
高松行き最終フェリー乗船後に本格的な雨が降り出してきました。

フェリー内の客席後部には、おそらく地元小学生が制作した盆栽の作品が張られていました。
パズルのピース状のシールを思い思いのかたちで張り合わせることが出来ます。
こういった見せ方の計らいもにくいですよね! 

 
高松港に到着後、その足で香川県立ミュージアムへ直行!



明日の高松市は一日暴風域となるため室内でじっとし、明後日は豊島(てしま)に行ってきます。ではまた!(続く)
 
 
 
 

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